中高年を対象としたノニジュース摂取による生活習慣病予防及び改善効果

日本薬学会 第141年会 ©日本薬学会 第141年会(広島 2021年3月26〜29日)

臨床試験・論文発表

中高年を対象としたノニジュース摂取による生活習慣病予防及び改善効果

〜終末糖化産物(AGEs)を指標とした検討〜


○渡部 亜美1、河野 一郎2、西岡 佐余子3、高石 雅樹1、浅野 哲1
1. 国際医福大薬、2. マルルー(株)、3. パルマキオン企画

【目的】

終末糖化産物(AGEs)は強い毒性を持ち、体内に蓄積することで、糖尿病や高血圧など様々な生活習慣病の要因となることが報告されている。そして、体内のAGE蓄積量は加齢と共に増加するといわれている。我々はこれまでに、健常な20代成人及び様々な基礎疾患を持つ高齢者を対象にかんぴょうパウダー摂取が体内AGE量を低下させることを見出している。一方、ノニは抗酸化作用などを持つ果実であり、近年糖尿病や高血圧などの改善効果が期待されている。そこで、ノニジュースの摂取による生活習慣病の予防及び改善効果を、生活習慣病の発症が増加してくる中高年を対象に体内AGE量や血糖値などを指標に検討した。

【方法】

介護施設従業員の女性(33~59歳)10名に、100%ノニジュース(ロイヤルタヒチ・ノニピュア)を朝食後に30 mLを12週間毎日摂取させた。1週間毎に血圧、脈拍、体温、体重、血糖値、皮膚AGE値を測定した。同時に、実験開始時と実験終了時のHbA1c値を測定した。また、実験期間中の体調などに関するアンケートを行った。

【結果・考察】

なお、本抄録は摂取4週間後までの結果についての記載であり、摂取5週間後以後の結果は現在解析中である。血圧、脈拍、体重、体温についてはノニジュース摂取による変化は認められなかった。血糖値・AGE値共に平均値において低下傾向が見られた。さらに血糖値に関しては、2名において初期血糖値が基準値(126 mg/dL)以上の高値を示していたが、摂取1週間後に急激な低下が見られ、その後正常値を維持した。AGE値における低下の傾向としては、摂取1週間後から徐々に低下した者と、摂取1週間後から2週間後にかけて急激に低下した者がいた。そして、便通が改善した際にはAGE値が低下し、一方で便通が悪化するとAGE値が上昇する傾向があった。

 従って、ノニジュース摂取により血糖値及びAGE値が低下することが示唆され、この効果に便通などの他の要因が影響を与える可能性が考えられた。今後全ての結果を解析し、ノニジュース12週間摂取の効果を報告する予定である。

基調講演
論文タイトル:中高年を対象としたノニジュース摂取による生活習慣病予防及び改善効果〜終末糖化産物(AGEs)を指標とした検討〜、国際医療福祉大学薬学部 渡部亜美、高石雅樹、浅野哲、マルルー株式会社 河野一郎、パルマキオン企画 西岡佐余子 日本薬学会第141年会利益相反の開示 発表者名:渡部亜美 私は今回の演題に関連して、開示すべき利益相反はありません。 目的:終末糖化産物(AGEs)は強い毒性を持ち、体内に蓄積することで、糖尿病や高血圧など様々な生活習慣病の要因となることが報告されている。体内のAGE蓄積量は加齢と共に増加すると言われています。一方、ノニは抗酸化作用を持つ果実であり、近年糖尿病や高血圧などの改善効果が期待されている。そこで、ノニジュースの摂取による生活習慣病の予防及び改善効果を、生活習慣病の発生が増加してくる中高年を対象に体内AGE量や血糖値などを指標に検討した。 <h2>AGEs</h2>:AGEsは還元糖とタンパク質・アミノ酸の非酵素的還元反応(メイラード反応)により生成される。これを「糖化」と呼び、生体内タンパク質の糖化は様々な生活習慣病の要因となる。 <h2>本研究測定対象</h2>AGEsは蛍光性や架橋生の有無で分類される。AGEsは生体内タンパク質(コラーゲン繊維)間に架橋して蓄積し、様々な疾病に繋がる。 <h2>ノニジュース</h2>ノニ(Indian Mulberry)はアカネ科に属する植物で、熱帯から亜熱帯の広い地域に自生する。東南アジアや太平洋諸島では、民間薬として古くからその果実や葉、根、種子など様々な部位を使用してきた。本研究では、ノニ果実を発酵させ濾過した100%ジュースであるロイヤルタヒチ・ノニピュア(マルルー株式会社)を使用した。 <h2>ノニジュース(ロイヤルタヒチ・ノニピュア)の栄養成分分析、日本食品分析センター調べ</h2> <h2>方法</h2><h3>対象者</h3>介護施設従業員の女性(33-59歳)10名<h3>試験期間</h3>12週間<h3>被験物質</h3>100%ノニジュース(ロイヤルタヒチ・ノニピュア<h3>測定項目</h3>血圧、心拍数、体温、体重、皮膚AGE量、血糖値(1週間毎)、ヘモグロビンHbA1c値(実験開始時と実験終了時)<h3>測定機器</h3><h4>皮膚AGE量</h4>TruAGEスキャナー(DignOptics)<h4>血糖値</h4>メディセーフフィット(TERUMO)<h4>HbA1c値</h4>SD A1cCareシステム(SD BIOSENSOR)<h3>備考</h3> また、実験期間中の体調などに関するアンケートを行った。なお、ノニジュース摂取開始日の前日に皮膚AGEスコアや血糖値等の初期値の測定、ライフスタイル及び健康状態に関するアンケート調査を実施した。本研究は国際医療福祉大学倫理調査委員会(17-Io-204)の承認を受け、この方針に従って実施した。 <h2>方法2</h2>各被験者の年齢及び性別、初期値のAGEスコア、血糖値、HbA1c値を表に示した。※体調不良により1名摂取中止したため、結果より除外した。
F:女性

<h2>血圧・心拍数・体温・体重・HbA1c値の結果</h2>血圧、心拍数、体温、体重においては変化は認められなかった。(データ示さず) HbA1c値も同様に摂取期間を通して、変化は認められなかった。 <h2>AGEスコアの結果</h2>摂取期間を通して、僅かに低下する傾向であり、摂取2週間後と7週間後に顕著な低下が認められた。 <h2>血糖値の結果</h2>摂取期間を通して、変動は僅かであった。このうち、摂取初期で急激に低下し、その後正常値を維持した者(3名)や、摂取期間全体を通して徐々に低下した者(1名)がいた。 <h2>AGEスコア:血糖値初期高値群対正常値群の比較結果</h2>血糖値初期値でグループ分けすると、高値群の方が摂取期間を通して常に高く、両群共に摂取期間を通して、低下する傾向であった。さらに血糖初期値正常群では、摂取2週間後と7週間後に顕著な低下が認められた。 <h2>血糖値:血糖値初期高値群対正常値群の比較結果</h2>血糖値初期高値群では、摂取1週間後に顕著な低下がみられ、その後は正常値を維持し続けた。血糖初期正常値群においては、摂取期間全体を通して正常値を維持していた。 <h2>No.7、50歳女性の試験結果</h2>血糖値:摂取開始時に糖尿病基準値(126mg/dL以上)を僅かに超える127mg/dLであったが、摂取1週間後から正常値内に収まり、僅かに増減しながらも低下し続け、有意な負の相関が認められた。 <h2>No.10、59歳女性の試験結果</h2><h3>AGEスコア</h3>摂取期間を通して概ね低下し続け、有意な負の相関が認められた。<h3>血糖値</h3>摂取開始時に糖尿病基準値を超える150mg/dLであったが、摂取1週間後に境界型よりも低値の正常型(110mg/dL未満)へと急激に低下し、その後も正常値を維持し続けた。 <h2>まとめ</h2>ノニジュースの摂取により、AGEスコアは二相性(摂取2週間後と7週間後)の低下が見られた。ノニジュース摂取初期には便通の改善がみられ、ノニジュースに含有するスコポレチンの腸蠕動亢進により、AGEsの生成は多段階的反応であるため、長期間を要する。ノニジュース摂取開始から1ヶ月以上経過してみられたAGEスコアの更なる低下は、ノニに含有するデアセチルアスペルロシド酸等によるAGEs生成阻害に起因する可能性が示唆された。 <h2>まとめ:血糖値</h2>血糖値においては、ノニジュース摂取により高値の場合は正常値まで低下させ、正常値からは低血糖を招くことなく良好に維持し続けた。従って、ノニジュースは糖尿病治療薬を低減させられる可能性があると考えられる。そして、高血糖状態ではAGEsの生成が亢進するため、良好な血糖コントロールが重要である。従って、ノニジュースは日々の生活に容易に取り入れられ、血糖値を良好に保つと共に、AGEsの生成や吸収を阻害することで、生活習慣病を予防・改善することができる食品である。