グルコースによる細胞傷害性に対するノニジュースの効果の検討

第141年会 ©日本薬学会 第141年会(広島 2021年3月26〜29日)

臨床試験・論文発表

グルコースによる細胞傷害性に対するノニジュースの効果の検討


○藤元 佳奈1、河野 一郎2、西岡 佐余子3、高石 雅樹1、浅野 哲1
1. 国際医療福祉大学薬学部、2. マルルー株式会社、3. パルマキオン企画

【目的】

 終末糖化産物(AGEs)は、グルコースなどの還元糖と蛋白質との間で起きる非酵素的な反応(メイラード反応)により形成される構造の総称である。AGEsは体内に蓄積されることで糖尿病合併症などを始め、様々な生活習慣病を引き起こす因子であると報告されている。一方、ノニとはインドネシアやオーストラリア原産の果実であり、近年、栄養価の高さから健康食品として注目されており、様々な成分を含み、抗酸化作用や細胞修復作用などが報告されている。そこで、AGEsの生成の原因となるグルコースによる細胞傷害に対するノニジュースの効果について、ヒト血管内皮細胞(HUV-EC-C細胞)を用いて検討した。

【方法】

HUV-EC-C細胞にグルコース 126 mg/dL(培地中グルコース濃度)とグルコース 4000 mg/dLと同時に、100%ノニジュース(ロイヤルタヒチ・ノニピュア)の濾液(0、0.1、1、10%)を24時間及び48時間曝露し、細胞生存率を測定した。

【結果・考察】

グルコース 4000 mg/dLを曝露した細胞ではグルコース 126 mg/dLを曝露した細胞と比べて、細胞生存率が曝露24時間後で約1/5倍、曝露48時間後で1/10倍に有意に低下した。一方で、グルコース4000 mg/dLを曝露した細胞において、ノニジュースの濃度が上昇するにつれて細胞生存率が上昇する傾向が見られた。そして、10%ノニジュースを同時に添加した細胞では細胞生存率が24時間後で約1.5倍、48時間後で約1.6倍高かった。
 従って、ノニジュースはグルコースによる細胞傷害性を抑制する可能性があると考えられた。今後、ノニジュースのAGEs生成抑制効果についても検討する予定である。

基調講演

論文タイトル:グルコースによる細胞傷害性に対するノニジュースの効果の検討</h1>発表者:国際医療福祉大学薬学部 藤元佳奈、高石雅樹、浅野哲、マルルー株式会社 河野一郎、パルマキオン企画 西岡佐余子 日本薬学会第141年会。利益相反の開示 発表者:藤元佳奈 私は今回の演題に関連して、開示すべき利益相反はありません。 目的:終末糖化産物(AGEs)は、グルコースなどの還元糖と蛋白質との間で起きる非酵素的な反応(メイラード反応)により形成される構造の総称である。体内に蓄積されることで糖尿病合併症などを始め、様々な生活習慣病を引き起こす因子であると報告されている。一方、ノニとはインドネシアやオーストラリア原産の果実であり、近年、栄養価の高さから生活習慣病の予防効果のある健康食品として注目されている。そこで本研究では、AGEsの生成の原因となるグルコースによる細胞傷害に対するノニジュースの効果をヒト血管内皮細胞を用いて検討した。また、ノニジュースによるAGEs生成抑制効果についても検討した。 AGEs:AGEsは体内に蓄積されることで血管内皮細胞に作用し、糖尿病患者の血管合併症の促進に関与することが知られている。<h3>AGEsの特徴</h3>・特異的な蛍光を持つ(励起波長:370nm 蛍光波長:440nm)・タンパク質間に架橋構造を持つ・黄褐色 試薬:D(+)-グルコース[ぶどう糖(無水)](富士フィルム和光純薬)/塩酸アミノグアニジン(富士フィルム和光純薬)/7.5w/v%アルブミン・D-PBS(-)溶液、ウシ血清由来(富士フィルム和光)/ロイヤルタヒチ・ノニピュア(マルルー株式会社)ノニ100%原液エキス 本研究では濾紙(粒子保持能(最大径):5μm)で濾過したものを「ノニジュース」として用いた。 ノニ:学術名:Morinda Citrifolia L.英名Indian Mulberry和名ヤエヤマアオキ分類アカネ科モリンダ属分布東南アジア(インドネシア)、オーストラリア原産栄養成分140種類以上民間療法根解毒・強壮剤果実マラリア、高血圧、糖尿葉傷の治療や抗関節炎 抗酸化能、免疫刺激及び抗腫瘍能が期待されている。 ノニジュースの成分スコポレチン 5.1mg/日本食品分析センター 使用細胞HUV-EC-C細胞(ヒト血管内皮細胞)<h3>ダブリングタイム</h3>約48時間使用培地Ham's f-12K培地 【実験1】グルコースによる細胞傷害性に対するノニジュースの効果実験方法96 well plateにHUV-EC-C細胞を播種し、CO2インキュベーター内で48時間培養した。 24時間経過グラフ 48時間経過グラフ 結果・考察グルコース4000mg/dLの24時間及び48時間曝露により細胞生存率が有意に低下した。・グルコース4000mg/dLを曝露した細胞では、いずれの時間においても、ノニジュースの添加により細胞生存率の低下が抑制される傾向であった。高濃度のグルコースにより細胞傷害が誘発され、ノニジュースがグルコースによる細胞傷害を抑制する可能性が示唆された。 【実験2】ノニジュースによるAGEs生成抑制効果実験方法0.1mol/LグルコースとBSA 25mg/mLに0.2%、1%ノニジュースまたは0.0016mol/Lアミノグアニジンを加えて、60℃で40時間インキュベートした。 440nmにおける蛍光強度グラフ参照 結果・考察グルコースとBSAを60℃で40時間インキュベートするとAGEsに特異的な蛍光強度が有意に上昇した。/1%ノニジュースの添加により440nmにおける蛍光強度の上昇を90%抑制した。→1%以上の濃度のノニジュースがAGEの生成を抑制する可能性が示唆された。 まとめ、結論ノニジュースがグルコースによる細胞傷害性を抑制する可能性が示唆された。/1%以上の濃度のノニジュースではAGEsの生成が抑制された。→我々は通常の50倍高濃度のグルコースが血管内皮細胞に対して細胞傷害性を示すことを見出し本学会で報告している。(第140年会)本研究では、ノニジュースが高濃度グルコースによる細胞傷害性を抑制する可能性が示唆された。また、ノニジュースが糖とタンパク質のメイラード反応を阻害しAGEs生成を抑制する可能性が強く示唆された。今後は、AGEsによる細胞傷害性の誘発メカニズムとノニジュースによる抑制作用の解明を引き続き検討する。